筆者は長年日本企業の海外直接投資コンサルティングに携わってきた。本稿ではこうした経験に基づき、日本企業の中国における経営ローカライゼーションという課題についてレポートする。 はじめに、ふたつのエピソードを紹介しよう。いずれも、日本企業の中国への関わり方を象徴する話だ。 もう五年ほど前になるが、筆者は経済産業省から委託されたあるアジア調査プロジェクトで、上海を中心とした華東地区に展開するEMS企業 (Electronics Manufacturing Service: 電子機器設計サービス)へのヒアリングを行った。 夏の盛りに上海郊外から始まって、昆山、蘇州あたりの新興工業開発区に立地する多国籍のEMS企業をいくつも回った。 そのとき、筆者に強い印象を残したのは、面談した各社の、それも総経理級・工場長級の人々が、例外なく日本を代表する大手電機メーカー出身者であったことだった。 「世界の工場」