34 都市文化研究 0 号 2008 年 小泉 恭子 著 『音楽をまとう若者』 山口 晋 本書は近畿圏の高校生96名への聞き取りを中心とし て,様々な状況での音楽実践(音楽演奏・聴取,イベン ト参加など)について記述されたエスノグラフィーであ る。著者はこのような経験的記述から,高校生の音楽の 好みが場所や状況によって使い分けられており,それが 個人的な嗜好の「パーソナル・ミュージック」,同世代 に共通する「コモン・ミュージック」,流行を超えて歌 い継がれる「スタンダード」という三層構造をなすこと を提示した。さらに,著者は高校生がポピュラー音楽に 関わる空間は「知識」と「評価」によって三つに分かれ るとした。それは学校が音楽知識を権威づけ,教師や同 級生の評価を伴う「フォーマルな空間」,高校生が日常 的な知識を交換するのみで年長者からの評価がない「イ ンフォーマルな空間」,日