一昨年の夏、私はラゴス近郊のある街で、人肉を食べさせるレストランに行く機会を得た。招待してくれた画家のLによると、この手の店は世界中にあるが、調理前の肉をちゃんと見せてくれる所はここだけだという。私は禁忌や侵犯の悦楽、といった観念とはほど遠い場に生きているので、大きく期待するものもなかったが、何しろ料理の値段が法外で、独力では又とない機会に思え、招待を快諾した。それにいざ食べるとなれば、多少の葛藤は生じるはずで、その内的感情をもとに、牛肉等の禁止の観念一般も、より深く解析できると思ったのである。 料理屋では白人の料理人が、銀皿の上に乗った肉片を見せにきた。表皮は黒っぽくて毛がなく、最終的確証はないものの、確かに人間のように思われた。かなり待って出てきた料理は、トマトベースに多量の香辛料で煮込んだもので、完全な「料理」であり、余計に奇怪である。私はどちらかというと、友人が期待しているはずの食