"Guilty of Romance"2011/JP かねてから苦手意識を持っていた園子温ではあるが、ここへきてはっきりと「嫌い」まで振り切れる作品に出合ってしまった。題材への浅はかさ、男根主義的なセックス観、過剰な露悪性、中途半端にブンガクをたしなむ俗物根性・・・すべてが辛かったですね。特に女性に対する勘違いぶりが本当に気持ち悪かった。平塚らいてうが憤死するレベルですね。このブログで否定的な感想を書くことは少ないのですが園作品に対する自分の立ち位置を整理する意味でも書き留めておきたいとおもう。言うまでもなくこれ私の考えなのでリテラシー低い人は読まないようにしてくださいね。『愛のむきだし』批判したときみたいに妙な揚げ足とりされるのはまっぴらなので。 まず東電OL殺人事件をモチーフに女性を描くことに、そもそもの違和感があるんですよね。自宅アパートで殺害された東電のエリート女性社員は夜な夜な街
"Kick-Ass"2010年/アメリカ・イギリス 公開前から既に高い評価を得ていた『キック・アス』の上映が始まった。序盤からラストまで、テンポのいいアクションとコメディで突っ走る痛快娯楽作であり、同時にここ数年アメリカ映画の傾向としてある「ヒーロー論」としてのアメコミヒーロー映画の総決算ともいうべき作品だ。 スクールヒエラルキーの最下層に属し、アメリカンコミックの世界に耽溺するナード気質の高校生デイヴ(アーロン・ジョンソン)は、どうして誰も現実世界ではヒーローになりたがらないのか、という疑問のもと、奇抜なコスチューム(スパイダーマン風のスウェットスーツ)に身を包みキック・アスという名で、自警活動を開始する。ヒーローらしい超能力も財力も持たない貧弱な青年の試みは、チンピラに刺された上に車に轢かれるという悲惨なスタートを切るが、インターネットを通じて少しずつ脚光を浴びはじめる。一方、同じく奇
中島哲也監督作品。騒然とした教室の中で、愛娘を殺された教師・森口悠子(松たか子)が、淡々と自らの復讐の意志を語り始める。タイトルからもわかるようにこの物語はとある事件をめぐる関係者の告白形式を主軸としており、そもそもが小説というフォーマットを前提としているのだった。そして映画も、その殆どが登場人物のモノローグによって進行していく。一般的には説明過多であるとして好まれないモノローグという表現形式ではあるが、計算されたトーンやリズム感を獲得することでどんな音楽よりも饒舌な劇伴となることが稀にある。どこまでも弱点と表裏一体ではあるが、この映画の最大の推進力となっているのが松たか子によるモノローグであることは間違いない。無表情で語り続ける松の異様な存在感は、ですます調の冷淡さも相まって、平凡な教室を緊迫した空間へと変質させていく。随分むかし松たか子のラジオ番組を聞いたことがあるが、声質や独特の語り
ティム・バートンが「アリス」を映画化するという出来すぎた話を一年以上前に聞いたときは、いまいち現実感が湧かなかったものだが、本当に公開となった。今回は2DとIMAX3Dの両方を見たが、個人的にはIMAX3Dを推したい。バートンは、はじめから今回の映画を3D作品として念頭に置いている。奇抜な昆虫たちや空中に舞う塵など細部まで描き込まれたワンダーランド(アンダーランド)の臨場感は3Dならではであるし、終盤のジャバウォッキーとの戦闘シーンなどは3D表現による効果にかなり比重を置いているので、2Dで見ると平坦に感じてしまうかもしれない。バートンの演出はあくまでもオーソドックスな映画文法に準じているので、画面も安定しており、『アバター』のように見た後にどっと疲労感が押し寄せてくるということもない。むしろ、ディズニーアニメ版のラストに似た心地よい倦怠を得ることが出来る。 一方で個人的には違和感がないわ
ピート・ドクターの監督第2作。78歳のカールじいさんは、死に別れた妻エリーとの思い出が詰まった小さな家にひとりで暮らしている。冒険家に憧れていた夫婦には子どもがなく、南アメリカにある「伝説の滝」で暮らすというささやかな夢のために貯金をしていたのだが、日常に忙殺され果たせないままであった。都市開発が進み、住み慣れた家を退去せざるをえなくなったカールじいさんは、大量の風船を使って家ごと南アメリカへ旅立つことを決意する。相変わらずコンセプトそのものが優れているとしかいいようがない。ただ、「予告編や序盤10分のトーンを期待していたので残念」という感想を見かけると、感動作であることを強調した宣伝がこの作品にとって不幸なことにおもえる。日本とアメリカではトレイラーのつくりがずいぶんと違っていて、スラップスティックな冒険活劇としての本質を理解していないと肩透かしを食ってしまうだろう。中盤以降はギャグとア
アーティスト死後に取り繕ったような追悼企画が行われるのは実はあまり好きではない。マイケル・ジャクソンに関してはことさら複雑な思いだった。しかし「あなたが音楽やダンスの魔法を信じるなら、敢えて混雑する日を狙って満員の映画館に駆けつけてほしい。」というid:maplecat-eveさんのコメント*1にぐっときてしまい、久々に新宿バルト9に足を運んだのだ*2。結論から言えばこの映画は全霊長類必見の傑作だ。もはやこれを映画といってしまっていいのかわからない。教科書の上の存在になってしまった過去の偉人でもない、メディアがでっち上げた「栄光と転落」の物語の主人公でもない、チャーミングで誠実で全身に才気が迸る表現者としてのマイケルがここにいる。次々と映し出されるステージ演出のアイディアには驚嘆するほかない。CGで再現した1000万人以上のダンサーを背景に映し出す「ゼイ・ドント・ケア・アバウト・アス」。往
結成30年近くになっても売れることのなかったへヴィメタルバンド・アンヴィルに密着したドキュメンタリー映画。監督のサーシャ・ガヴァシはどこかで見た名前だと思っていたが、『ターミナル』の脚本家であった。 以前『レスラー』について書いたときに、自分がプロレスとメタルを軽視しているふしがあることはふれたとおもう。『レスラー』には、スコーピオンズやガンズ・アンド・ローゼスなど80sメタルの名曲たちが多数使用されているのだが、それらの楽曲はある種の郷愁と諦念を伴っていた。80sメタルは時代から取り残された主人公ランディを象徴するものであり、同じく大衆から捨て去られた幾多のカルチャーへの鎮魂歌でもあったのだ。今でもメタルを聴く人はたくさんいるが、やはり80年代という豊かでにぎやかな時代にこそ輝けた音楽だったのではないか。『アンヴィル!』はその意味で『レスラー』の変奏ともいえる。 1984年に日本で開催さ
まずは大傑作。そしてとんでもないくらい不道徳な映画。 結局しっかり感想を書くことができなかった阪本順治監督の前作「カメレオン」*1は、手に汗握るカーチェイスあり、スリリングな乱闘あり、乾いた恋愛ドラマありの理想的なアクション活劇*2だった。90分弱の上映時間も含めて真に理想的な娯楽映画だともいえる。対して「闇の子供たち」では、日本にとっても無関係とはいえない社会問題を、タイでのロケーションを中心に130分間丁寧に描いていく。しかし、映画としては少しも難解でなく、やはり多くの人に見て欲しい娯楽映画だ。阪本順治は、デビュー作「どついたるねん」から一貫して明快な映画を作り続けているように思うが、もはやそれが大衆に浸透することには全く興味を持っていないのだろうか。上映する劇場も全国でわずかだし、大々的な宣伝もない。「ミニシアターっぽい」映画が多く劇場でかかって、「商業映画っぽい」映画が単館でしか封
加爾基 精液 栗ノ花 アーティスト: 椎名林檎出版社/メーカー: EMIミュージックジャパン発売日: 2008/07/02メディア: CD購入: 4人 クリック: 116回この商品を含むブログ (50件) を見る 椎名林檎がベストアルバムを出すとは感慨深い。ある意味ではレディオヘッドよりも感慨深い。椎名林檎が死んで5年ほど経つ。何を言ってるんだ椎名林檎なら生きてるぞ、と大半の人は言うかもしれないが僕はあれは幽霊だと思っている。ベスト盤やB面曲のコンピなどの「入門編」が次々リリースされる中、ひっそりとこのラストアルバムが再発された。発売当時流行していた悪しき規格CCCDを外した通常盤でのリリースだ。事変以降の林檎しかしらない中高生諸君よ、ベスト盤もいいが、まずこっちを買え。買うときっと後悔するだろう。しかし3000円分の元を取るつもりで我慢して聴くんだ。多感な君たちにはこのアルバムを独りで聴
GAME アーティスト: Perfume,中田ヤスタカ出版社/メーカー: 徳間ジャパンコミュニケーションズ発売日: 2008/04/16メディア: CD購入: 20人 クリック: 826回この商品を含むブログ (689件) を見る なぜだ!どうしてみんなPerfumeの話をするんだ!? 僕の人生にPerfumeはあまり関係ないと宣言してしまったので、ここでまた色々と書くのは往生際が悪いのである。はてな界隈でPerfumeが席巻している状況はイヤだなぁと言うことが、その状況を促進することに加担している。何と逆説的な、何とカッコ悪い。本当は僕はPerfumeではなくてダグラス・サークの話をすべきなんだっ! その通りどこへ行ってもみんなPerfumeの話をしているのだ。彼女たちは「語ること」を誘惑する。「観られる」こと「聴かれること」以上に「語られること」によって消費される最初のアイドルに違いな
GAME(DVD付) 【初回限定盤】 アーティスト: Perfume出版社/メーカー: Tokuma Japan Communications =music=発売日: 2008/04/16メディア: CD購入: 5人 クリック: 1,325回この商品を含むブログ (851件) を見る Perfumeが僕の人生にあまり関係ないということに気がつかなくてはならない。浮気性で飽きっぽい僕は、いつまで経っても寝てくれない彼女とこれ以上付き合うわけにはいかないのだ。 僕はPerfumeが好きというよりPerfumeがウケている状況そのものに興味がある、というイヤな人間なのだ。カプセルは気取り過ぎで全く興味が持てないが、Perfumeは適度にスノビッシュなので音楽も結構好きだったけど、でも新作は全然ノレない。「ポリリズム」あたりから薄々感じていたが、中田ヤスタカが気負いすぎている。タイトルトラック「G
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