今の家に引っ越して約2年、毎月楽しみにしていることがある。近所のタバコ屋さんの窓に貼り出される川柳だ。時事ネタやあるあるネタ、時には自虐ネタなどをユーモアとペーソスたっぷりに詠んでいる。 1ヶ月以上更新間隔が空くと、新作を心待ちにしている自分に気づく。いつも「紀楽」という柳号で詠まれているが、作者はどんな人なのだろう。ずっと気になっていたので確かめてきた。
今の家に引っ越して約2年、毎月楽しみにしていることがある。近所のタバコ屋さんの窓に貼り出される川柳だ。時事ネタやあるあるネタ、時には自虐ネタなどをユーモアとペーソスたっぷりに詠んでいる。 1ヶ月以上更新間隔が空くと、新作を心待ちにしている自分に気づく。いつも「紀楽」という柳号で詠まれているが、作者はどんな人なのだろう。ずっと気になっていたので確かめてきた。
「どの翻訳を選ぶか――ボードレール『悪の華』の邦訳の誤訳について」がずいぶんと好評だったので、調子に乗ってもう少し続きを書くことにしよう。幸か不幸か、ボードレールの『悪の華』の誤訳についてはまったくネタに不自由することがない。すでに『悪の華』を読まれた方も、これから読んでみようとお考えの方も、少しでも参考にしていただければ幸いである。 Les fleurs du mal 作者:Baudelaire, CharlesGallimardAmazon とはいえ、前回の記事も今回の記事も、じつは2007年に以前のブログ『平岡公彦のボードレール翻訳日記』をはじめたばかりのときに書いた記事をただまとめなおしただけなので、そちらにもほぼ同じ内容のことが書いてある。だが、そっちは読んでほしくない。ほんとうに読んでほしくない(笑)。この記事を書くために読み返してみて、自分の書いた文章のあまりのバカさ加減に、
今年アニメ化された押見修造の『惡の華』(講談社コミックス)のおかげで、ボードレールの『悪の華』にふたたび注目が集まっているようだ。訳者の一人として、喜ばしく思う。 惡の華(1) (少年マガジンKC) 作者:押見 修造講談社Amazon 押見の『惡の華』は読んでいたが、私自身、しばらくボードレールから遠ざかっていたし、そもそも読んだことを公言することがはばかられるようなマンガだということもあり(笑)、なかなかそのことを書く機会がなかった。これだけ大きくボードレールを看板に掲げた作品なのだから、おそらく私以外のボードレールの訳者や研究者も一巻くらいは読んでいるのではないか。 いい機会なのでこのマンガの感想を書いておこう。ボードレールの『惡の華』を愛読する主人公の春日高男は、ある日、想いを寄せていたクラスメイトの佐伯奈々子の体操着を盗む。春日はそれを見ていたクラスの嫌われ者の仲村佐和に脅迫され、
→紀伊國屋書店で購入 「こわい批評家」 もう十年以上前になるが、あるパーティで荒川洋治さんをお見かけしたことがある。「下手に俺に話しかけるな」という風情が漂っていて、いい意味で「こわい人」だなと思った。もちろん、筆者は話しかけなかった。 文章を書く人が「こわい人」であるのはとても大事なことのような気がする。最近は「いい人」でないとなかなか生き延びていけない。多弁で、裏表がなくて、私生活もオープンで、パスタを茹でたり、SUVに乗ってたり、メールの返信も早いような「いい人」。そんな「いい人」の書くものは、わかりやすくて楽しいかもしれないが、一番文章にしてもらいたいような薄暗い部分にはまず到達しない。 本書の『昭和の読書』というタイトルの意味は、読み進めていくと少しずつわかってくる。表向きそれは、昭和の作品や作家を語るということ。昭和の本の読み方、文章の書き方、さらには生き方を振り返るということ
→紀伊國屋書店で購入 「物作りの哲学者」 素朴な疑問を抱き、素直に驚き、率直な問いを立てる。常識や先入見を鵜呑みにせず、自分で考え、調べ、読み、また考える。そういう単純な営みが、哲学である。 本書にはその営みが生きている。のみならず本書では、物を考えることが物を作ることと一体になっている。本書は、物作りの思索家による哲学書である。 物作りとは、道具を作ることである。道具とは、それを有している者が一定の用途のために使う物である。そのような道具の極致、つまり、使われるがそれ自体は作られることなくもっぱら作ることに与る原初的道具、それが身体である。 ギリシア語で「オルガノン(organon)」とは、「道具」を意味するとともに、「器官・身体」を意味する。身体という道具を具えておのずと動くもののことを、「有機体(organism)」と言う。それは古来、「生物」の定義そのものであった。道具と身体とのそ
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