聖書には含まれていないイエス・キリストの教えが存在するとしたら、どう思うだろうか。キリスト教徒なら「そんなのは悪い冗談でしょ。聖書は聖霊の導きで書かれているのです」と答えるかもしれない。だが、聖書に含まれている、イエス・キリストの生涯を記す4つの福音書(マルコ、マタイ、ルカ、ヨハネ)以外に、本当のイエス・キリストが語った言葉を収録する別の福音書がかつて存在し、そしてそれが今の聖書に収録されている四福音書よりも真実を伝えるとしたら、どうだろうか? いや、何をもって「真実」だというのかという議論にもなるかもしれない。本書、「禁じられた福音書 ― ナグ・ハマディ文書の解明」(参照)は、その問題を本質的に扱っている。 訳本の表題「禁じられた福音書 ― ナグ・ハマディ文書の解明」は日本人に向けてよく練られている。確かに本書では、現在のキリスト教からは禁じられた、異端の福音書が議論されている。キリスト