今回は睡眠の定義について考えてみたい。連載も30回を超えてからこのテーマは今更感があるが、一度は触れておかなくてはならない。当然、この連載でも初期のうちに取り上げるつもりであったが、タイミングを逸してしまっていた。特に人の睡眠を理解するためには「脳波睡眠」という考え方が重要であり、今回のキーワードである。 睡眠の定義とは何かという問いに「目が覚めていない状態」と答えればはぐらかされたと怒る人もいるだろう。しかし実際のところ、睡眠研究の黎明期では「睡眠とは周期的に意識が消失する状態」といった程度の定義しかできなかった。しかもこの定義には一つ大きな問題があった。意識の定義が睡眠の定義以上に複雑なのである。