今回の記事では, プロジェクト管理に特化したアジャイル開発手法であるスクラムの概要を説明します. また, スクラムによる開発が成功する理由を説明するための理論的なバックボーンとして引用されている知識創造プロセスやコンテキストの概要を紹介します. さらに, 20 名程度の中規模開発チームにおいてスクラムを適用し, 開発に成功した事例を紹介し, その中で知識創造プロセスやコンテキストが生まれたのか否かについて考察します. 1. スクラムとは 1.1 スクラムの価値と理論的な基盤 スクラム [1] は, Ken Schwaber と Mike Beedle によって考案されたアジャイル開発手法です. スクラムという開発方法論の名称は, ラグビーのスクラムにちなんで名づけられたそうです. スクラムは、Schwaber らがいくつかの失敗プロジェクトを立て直す経験を通じて生み出されたとされています.