進化するヒューマノイド 最近のある朝、フランスのロボットメーカー、アルデバランのパリ市内にあるオフィスでのことだ。エンジニアのナタニエル・ドゥカンが出社すると、椅子にヒト型ロボットのナウ(NAO)が座っていた。ドゥカンは思わず身をかがめ、ほおを寄せてナウにキスをした。するとナウも首をかしげて彼のほおに触れ、チュッという音を立てた。 いかにもフランス風のロボットだが、こういう肌身に感じるしぐさは、実は重要な転換を意味する。アルデバラン製、身長58センチのナウは価格1万6000ドル。学術研究に利用されたり、ロボットのサッカー競技会に出場したりしている。 最近まで、大抵のロボットは人間と距離を置く関係にあった。主に工場でスピード、精度、力を必要とする反復作業に使われるからだ。そういう世代のロボットは、人間にとって危険な存在なので、おりに入れられた。工場の職員たちの身の安全を守るため、柵に囲まれた