日本経済の成長力が弱くなった現在、次のリーディング・インダストリーを見つけるのは難しい。 一橋大学大学院商学研究科教授 橘川武郎=文 平良 徹=図版作成 日本経済の成長力が弱くなった現在、次のリーディング・インダストリーを見つけるのは難しい。一定の条件が整えば、化学産業には、その役割を担う可能性が大いにある、と筆者は説く。 機能性化学製品の世界シェアは自動車より高い 日本の近代化のプロセスでは、その時々のリーディング・インダストリー(主導産業)が、経済発展全体を牽引してきた。それは、明治初期の製糸業に始まり、綿紡績業、化学繊維産業、造船業、鉄鋼業、電気機械産業、自動車産業と受け継がれてきた。新興国の台頭が著しく、日本経済の成長力が鈍化した今日、次のリーディング・インダストリーを見つけ出すことは、簡単ではない。IT産業やコンテンツ産業に期待する向きもあるが、国際競争力や事業規模を考え合わせ