被害者が1人の殺人事件で極刑が下されるかどうかが注目された今回の判決公判で、「慎重な検討が必要だ」として判決期日を延期していた平出喜一裁判長は、最終的に死刑を回避した。被害者参加制度が始まるなど遺族や犯罪被害者への配慮を求める世論が強まり、量刑は厳罰化の傾向にあるが、死刑の適否は従来通り、厳格に検討すべきだと判断した。(小田博士) 「永山基準」 死刑は、昭和58年の最高裁判決が、犯行の罪質、動機、態様(特に殺害手段の執拗(しつよう)性、残虐性)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)-などを考察し、やむを得ない場合に許されるとの判断を示している。「永山基準」と呼ばれて一般化されており、判決もこの基準に従った。 検察側は、遺体を200個以上の肉片、骨片に切り刻み、汚物のようにトイレなどに捨てるなどの残虐な行為を強調。犯行動機に直結するわいせつ目的略取罪を加え、罪状を重く見た。