巨額な公共事業復活で、経済と国土の「強さ」を取り戻そうとしている日本。長野県下條村の伊藤喜平村長(78)は、それとは異なる道で過疎の村をよみがえらせた。十四歳以下の人口比率は16・4%と長野県内トップ、東京二十三区のどの区よりも上回る。「奇跡の村」と呼ばれている。 (飯田孝幸) 山あいを抜ける国道151号沿いに古い民家が点在し、あとは畑が広がる山村。そのところどころに立つ、二~四階建てのきれいなマンション風の集合住宅が異彩を放つ。周辺では子供たちの声が響く。 「今は二十歳になった長女が保育園にいたころ建ち始めましたねえ。あのころから運動会はにぎやかだった。子どもが減っている周りの村や町とは全然違う」。村で住宅設備工事業を営む男性(44)は、そう話す。 かつて養蚕で栄えた村も、戦後は衰退の一途をたどった。若者は流出し、一九四五年に六千人を超えていた人口は、九〇年には三千九百人を切った。 建設