若者の貧困問題をニュースで見る度に、人ごとではない不安を感じる人は多いだろう。この問題は、現代に限った話ではないという。昭和34~36年(1959~1961)にかけて刊行された『日本残酷物語』には、教科書には載っていない貧しい庶民の歴史がまとめられている。これを編集したのは、後に雑誌『太陽』の編集長となる谷川健一と、『忘れられた日本人』などの著書で有名な民俗学者の宮本常一だ。 「『日本残酷物語』を読む」(畑中章宏/平凡社)は、出版された当時の社会状況や、編集作業の舞台裏などを解説しつつ『日本残酷物語』を読み解いた1冊だ。そのなかから、明治から昭和の初め頃、実際に生きられた“残酷な青春”を紹介しよう。 ●「戸籍に名も残らない」――雇われ先もなく結婚もできない者の末路 佐渡島の明治5年(1872)の戸籍に「伯父」「伯母」とだけ記された、名もなき者たちがいる。東北地方では「おんじ」「おじ坊主」と