児童虐待の問題を調べていくと、児童相談所の役割や権限についてわかりやすい解説がないことに気づく。児童相談所というのは児童虐待だけを扱っているのか? そもそも国の機関なの? 市町村の機関なの? などという初歩的な質問に始まり、新聞などでよく見る「臨検(強制立ち入り調査)」と「立ち入り調査」はどこが違うの? いや「一時保護」と「立ち入り調査」は違うの? 「一時保護」は「施設入所」と同じなの? などの問題を一定程度、体系だって説明してくれる本がほしいと思うのだ。 本書はその役割をよく担っている。 加えて、たとえば児童相談所長が一時保護の判断の権限を与えられる。だが、それが重荷になってしまい、本当なら司法を介在させるべきなのに、そんなことをやっている体制も時間もないというジレンマ。あるいはケースワーク主義と介入の葛藤の問題など、現在児童虐待対策をめぐる「対立・論争」点の基本が大づかみにわかるように