この数日鈍く追われるように考えていたことがあった。論理的に考えてもわからない問題は、深く自分の魂の奥の声に耳をすますほうがいい。その声は、ル・グイン「こわれた腕環(ゲド戦記2)」"THE TOMBS OF ATUAN"を再読せよ、とつぶやいていた。 「こわれた腕環」はゲド戦記"Earthsea Books"の二巻目にあたる。ゲド戦記は、ファンタジー文学の古典の一つ。仮想の世界アースシーの魔法使いゲドの人生を描いたもので、一巻目「影との戦い」"A Wizard of Earthsea"では、主人公のゲドが一人前の魔法使いとなり、自分の運命に向き合っていく姿を描いていく。一見すると魂の成長の物語のようにも見えるし、そう読まれてもいるのだが、またゲド戦記の他の巻きにも言えるのだが、物語の比喩は単層ではない。ゲド戦記は、読み返すたびに異なる啓示をもたらす。私が40歳を越え、ある人生の危機をかろうじ