最後に少し、「母性」について考えてみたいと思う。ここで「母性」とカッコをつけているのにはわけがある。昨今、母性という言葉の意味があまりに狭義に解釈されていると思うからである。カッコをつけた「母性」は、父性の反対語ではない。次元が違う。女性や男性という性の違いを超越した、もっと大きな意味を示しているつもりなのだ。 次世代を守り、育むことは、あらゆる生命に植え付けられた本能。生きとし生けるすべてのものの営みのメインストリームである。自分たちの命を生かし、次世代につなげるためにこそ、糧を得るのである。それをより確かなものとするために、人間は群れをつくり、むらをつくり、社会をつくり、発展してきたはず。つまり、高度に文明化された社会も、グローバルな経済活動も、もとはといえば「母性」を守るため、「母性」によって作られたはずである。 しかしいつしか、糧を得ること自体や、社会や経済を継続させることがメイン