88-7ムシのはなし 謎の寄生虫(第五話) 国立科学博物館 倉持利明 肩の凝らない「動物のはなし」index 第6話へ 21世紀を間近に控えた今日、謎といわれるものはどれだけあるのでしょうか。今世紀が目覚ましい科学の進歩と細分化の100年であったことは誰もが認めるところでしょうが、それぞれの分野でよく分からないこと、分かったことになっているが本当は未だに怪しいこと、研究を重ねるにつれどんどん分からなくなっていることなど、程度の差はさまざまでも多くの謎が現在も存在し続けていることと思われます。今回は今世紀初頭の発見以来、謎であり続けた寄生虫を紹介します。 芽殖孤虫Sparganum proliferum(Iijima,1905)は、1904年に時の東京帝国大学医科大学外科学、近藤次繁教授らにより東京在住の女性から発見された条虫の幼虫(擬充尾虫plerocercoid)に対