本作は、精神に異常をきたした医者・カリガリ博士と、その忠実な下僕である夢遊病患者・チェザーレ、およびその二人が引き起こした、ドイツ山間部の架空の村での連続殺人についての物語である。本作は、登場人物の一人であるフランシスの回想を軸にストーリーが展開する。初期の映画では直線的なストーリー進行が大半を占めたが、本作品は、その中でも複雑な話法が採用された一例でもある。 冒頭、フランシスが隣の男と会話を交わしている様子と、その横を茫然自失のようであてどもなく歩く、美しく若い女性が描かれる。フランシスはその女性が自分のフィアンセであること、そして二人が体験した世にも奇妙な体験を連れの男に語り始め、これより回想シーンが続く。 フランシスは、友人のアランと、村にやって来たカーニバルを見に出かけた。彼らはカリガリ博士という人物と、博士の見世物である眠り男チェザーレの似顔絵に目をとめた。博士は、チェザーレが2