新しい薄型テレビ技術「SED(表面電界ディスプレー)」で悲願のテレビ事業参入を目指すキヤノンに大きな障害が立ちはだかっている。 今年2月22日、米テキサス州西地区連邦地裁でのこと。キヤノンのSEDテレビ生産に欠かせない技術特許の使用権が、この日の略式判決によって使えなくなってしまった。この裁判の原告は、ナノテクノロジーのベンチャー企業、米ナノ・プロプライアタリー。被告はキヤノン。 一審判決は、4月30日に下る予定だが、同様の内容となれば、SEDテレビ計画は大きなダメージを受けることになる。ナノに歩み寄る形で特許料を支払うのか、あるいは事業の大幅な見直しか…。 「判決がキヤノンにとって好ましくなければ、控訴して争う」 3月の株主総会の席上で、キヤノンの内田恒二社長は、SED事業の遅れを懸念する株主の声に、そう答えた。だが、法廷闘争が長引けば、それだけSEDテレビの実現が遠のいてしまう。 崩壊