今年は、あの悲惨な戦争が終結して60周年の節目の年である。戦争が人類にもたらした大きな災禍をふりかえるにあたり、河南省南召県の農民、孫邦俊さんの一家が、なんと47年もの間、日本の負傷兵・石田東四郎さんの世話をして、ぶじに帰国させたという実話を聞いた。そこで、同県にほど近い南陽市を訪れ、孫邦俊さんの家族や証言者を取材、この実話を記録することにした。 日本の負傷兵 南陽市は河南省南部に位置する「歴史文化の町」である。三国時代(220~280年)の蜀国の丞相・諸葛亮は若いころに、この地で晴耕雨読した。いわゆる「三顧の礼」で知られる故事は、ここが発祥の地だという。 南陽市から北へ自動車で一時間ほど走ると、南召県太山廟郷につく。孫邦俊さんの家が、この村にあるのである。孫さんとその息子の孫保傑さんは、すでに他界したという。息子の嫁の王成香さんが、この話をもっともよく知る人物となっている。 彼女の話によ