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2015年9月30日のブックマーク (1件)

  • 岬にて - 美の特攻隊

    それはまだ沈まぬ太陽を知っている朱に染まる夕暮れに始まった。 潮風にさらわれる娘の髪は空いっぱいにあふれる光を浴びて琥珀色にかがやいている。 茫洋とした夕空に寡黙な祈りを捧げた草原は、その草いきれのなかに安息を見いだしているのか、やや湿った空気に包まれながら、透き通った娘の微笑を絶やそうとはしない。 ところどころに生い茂った灌木の加減により広々とした眺めである岬は、かえって開放感を知らしめてくれる。岬の下はかなりの深みを持っているのだが、それほど距離をへてないここからの眺望からもいまだ険阻な荒磯に出会うことはなく、遠い潮騒の音さえ届いてこなかった。 聞こえてくるのは反照を受け緑が黄金色にそよぐ衣擦れのような幽かな調べだけである。 まぼろしが映しだされているのではない、夢があまりの絶景を生みだしてしまって境界を設ける必要がなかったにすぎない。 スクリーンの彼方にまで焼きついている西日を疑うす

    岬にて - 美の特攻隊