(>>1の続き) 現実と非現実との割り切りができない半面、主人公のおしゃれなライフスタイルには強く憧れる。ハルキストたちは、作品に登場する音楽や料理だけをテーマにした解読本まで、しっかり読み込んでいる。前出のAさんも、小説「ねじまき鳥クロニクル」の冒頭のように、スパゲティを茹でる間のBGMは、アバドが指揮するロッシーニの「泥棒かささぎ」だ。 「なんだか生き方そのものが、村上作品のマニュアル化です。いい大人なんだから、もう少し幅のあるライフスタイルを目指してもいいのでは」(白井さん) さらに恋愛面でも、困ったハルキストは多い。 「春樹作品独特の、謎めいた女性と主人公との、葛藤のない乾いたセックスを、現実のものだと勘違いしている男性が結構います。それに、小説の主人公があまりにも普通にモテるし、セックスをするシーンも都合よく挿入されている。現実の恋愛では、小説のように都合よくいくわけがあ