ブックマーク / norishiro7.hatenablog.com (11)

  • 俺が大学二年の終わり頃から大学三年の始め頃にかけてがんばって書いていたものと思われる。推敲していないと思われる。恥ずかしいと思われる。長いと思われる。 - ミック・エイヴォリ

    青年はドアの前に立ち、セーターの袖から飛び出した細い指でチャイムを押した。やがて、受話器を取る音がして、部屋の中の空気の震えが聞こえてきた。「開いてるよ」と感じのよさそうな男の声がした。物腰の弱そうな青年は、一瞬身を固くしたが、すぐに取ってつけたような、不機嫌に見えなくもないような無表情でチャイムを睨み付けた。「入ってくれていいんだ。君は訪ねる部屋を間違っちゃいないからね。早く入りたまえよ。開いてるんだ。君のために開けといたんだぜ」 訪問者は、こうした場合に当然考えられる事態を予期しながらも、勇敢にノブを回し、鍵が開いているのか疑っているようにゆっくりドアを引いた。 その玄関はいささか埃っぽい印象である。幾何学模様の床敷きは、新しそうにも見えるが、四隅のうちの三つが端からめくれ上がり、うちの二つは裏側を見せている。その下には、無愛想なコンクリートがのぞいた。床敷きの上に目を移すと、その、奇

    Lobotomy
    Lobotomy 2010/07/16
  • ハロー!霊波乃光 - ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ

    こないだ、マク・ド・ナルドで、90歳の霊波乃光おばあちゃんに出会いました。いきなり霊波乃光と言っちゃうのは、今日みなさんにしたい話は、宗教と別に関係ないからです。 こんなマクドナルドでソロ活動している超年配の女性が隣に座ってきた時点で、俺は人より若干そういうことが多いので、同じOLに二回逆ナンパされたり、ボロボロのおばあさんに草を買ってくれ〜買ってくれ〜と頼まれたこともあるので、その時点で気をつけようと思ってた。 そしたらダメだった。 かたくなにイヤホンを耳に詰め込んでいる俺の方に、おばあちゃんが顔を若干寄せてきて、これ見てるよね? 見てるよね? とあせった俺がわざと考え事ありくさく前だけを見ていたら、その時すでにおばあちゃんは話しかけていました。時すでに話しかけていたんだ。 それに気づかない俺は、あんまり見てくるので、耳に流れていた「みなし児のバラード」をそっと外し、おばあちゃんの方を見

    ハロー!霊波乃光 - ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ
    Lobotomy
    Lobotomy 2010/06/11
  • モテモテ指南 - ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ

    放課後、六年生の小島くんは転入生の唐沢くんを呼び出した。 「唐沢くん、急に呼び出してごめんよ」 「ぼくは忙しいんだぜ。5時から塾があるし、7時からはネプリーグを見るんだ。早く済ましてもらわないと」 唐沢くんは小学生にしては長めにカットされた髪の毛をいじりながら、腕時計を見た。学校では禁止されているが、先生、男の先生、教頭先生を次々に論破し、ついには校長先生をぐうの音も出ないほどいてこまし、土下座までさせたらしい。これは噂だが、校長先生は今でも彼のことを「唐沢さん」と呼ぶと聞く。 しかし何より、小島くんが唐沢くんに憧れるのは、そのモテモテ能力であった。転入初日から唐沢はモテにモテた。勉強はできるが、顔が特別いいわけではない。しかしモテにモテた。 「ぼくも唐沢くんのようにモテモテになって、スペッシャルな人生を送りたいんだ」 唐沢くんはため息をつき、何か考えている様子だったが、黒板の所までゆっく

    モテモテ指南 - ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ
    Lobotomy
    Lobotomy 2010/02/04
  • 博士とぼくの社会勉強「公共性の構造転換」 - ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ

    博士 「やあ、ユキオくん。性病はこれ全て自業自得。私は決して同情はしないよ」 ユキオ 「同情なんかいらないよ。その分ぼくはセックスを楽しんだ」 博士 「セックスとか言うんじゃない!」 ユキオ 「(え?)」 博士(不機嫌そうに) 「今日の勉強を始める。君は、ユルゲン・ハーバーマスを知ってるか」 ユキオ 「知ってるよ。フランクフルト学派の第二世代にあたる、二十世紀を代表する社会学者だ」 博士 「そうだね。じゃあ彼の書いた著作『公共性の構造転換』を知っているかい」 ユキオ 「一番有名なのだね」 博士 「そのとおり」 ユキオ 「……」 博士 「そのとおりだ」 ユキオ 「終わり?」 博士 「早く泌尿器科に行きたまえよ」 ユキオ 「もう午前中に行ったよ。ハーバーマスについてそれで終わりなの?」 博士 「……何が言いたい?」 ユキオ 「何か教えてよ」 博士 「ハーバーマスという人がいて、『公共性の構造転

    博士とぼくの社会勉強「公共性の構造転換」 - ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ
    Lobotomy
    Lobotomy 2010/01/31
  • 米倉二等兵、最後の作戦 - ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ

    日露の甘美な記憶に験を担げば、天気晴朗なれども波高し。軍用港を抱くようになだらかな輪郭を成した湾、その中央をただよう一隻の戦艦が粟立つように蠢くのを、地上から練習機で空へ飛び出した特攻隊員が上空から目撃した。獣のにおいがした。 戦艦上では、甲板に建った操舵室の三階にある見張り台に、軍服姿の男がでてきた。男は身を乗り出し、眼下に向かって大声の演説を始めた。 「諸君、私が、陣頭指揮をとる米倉二等兵である。諸君に集まってもらったのはほかでもない、偏にこたびの重要任務完遂のためである。我々が乗っておるこの戦艦『哀峰』はどこもかしこも故障し、今日をもって、爆撃さる後、沈没する運命にある。なぜそんなことを言えるのかといえば、当鑑は囮、わざと憂き目を辿るにすぎぬからである。毛唐軍が、燃料も火薬も積載せぬもぬけの傷んだ古艦にうつつを抜かす隙に、敵の陣を爆砕せしめんとするのが今回の作戦の大綱である。フィリ

    米倉二等兵、最後の作戦 - ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ
    Lobotomy
    Lobotomy 2009/10/18
  • 『フルタイムライフ』柴崎友香 - ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ

    フルタイムライフ (河出文庫) 作者:柴崎 友香発売日: 2008/11/04メディア: 文庫 僕は仕事をしたことないどころか、最近よくすれ違ってそのたびに挨拶をしてくる「仕事」というものに対して、いけないなと思いながら無視しています。僕は仕事について全然知りませんでしたが、そしてこの小説を読んでも仕事というものはよくわかりませんでしたが、「仕事のある生活」というものがスーッと溶けて早く効きました。 主人公は僕と同い年の22歳で、美大を出て働き始めたらしく、この、働き始めたらしく、という言葉が偉く似合う着こなしで小説は始まります。働き始めたらしくて、就職してからもちょくちょく会う大学の友達もいるらしくて、恋愛も人並みにやってるらしくて、上司もそりゃあいるらしくて、そして戸惑っているらしくて、という仕事のある生活が10ヶ月分書かれます。 僕に限らないと思いますが、慣れたら楽しくなってくるだろ

    『フルタイムライフ』柴崎友香 - ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ
    Lobotomy
    Lobotomy 2009/06/09
  • マーズ・アタック - ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ

    そこは先輩の部屋。僕の家にきた宇宙人と同じ宇宙人が二匹、先輩と何か話している。火星人だ。 「だって俺の場合さぁ。この惑星(ほし)に生まれてさぁ」先輩は両手を後ろについて、体育の時リラックスした男子高校生のような体勢でいながらも、戸惑っているのがポテトチップスのべこぼし具合でわかった。 「どうしてですか。火星いいですよ。星きれいだし」 「だからさぁ、行かないよ。大体あんた、しつこいよ」先輩は火星人を指さした。「俺は地球が大好きなんだよ。四季もあるし」 「そんな四季で押して来られても。出たよ。ていうか、いっつも変わり目に文句言うじゃないですか」 火星人の方も先輩を指さしたので、先輩は明らかに気分を害したようだった。火星人の指は、ヒョロヒョロしており、ペンだこが出来ていた。 「なんでだよ、文句言ったことなんか無いよ」 「今年の風邪は鼻に来るとか言ってるくせに」 先輩は一瞬黙ったが、こたつを両手

    マーズ・アタック - ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ
    Lobotomy
    Lobotomy 2009/01/06
  • 僕は中学受験に失敗する - ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ

    スーツで決めた塾の先生は、いつものように一言も発さずに部屋へ入ってくると、これはいつもと違って、持っていた紙袋から片手で五冊ずつ、四回取り出した。二十冊のマンガが先生用の机に積み上げられた。 僕は小学生だけど、よしマンガが読めるぞなどという悠長なことは思わなかった。みんなもそうは思わなかったに違いない。僕たちは中学受験を半年後に控え、いよいよ気分が出てきたところだったし、大体、先生の言いなりになって勉強してきたこの数年間、「日歴史」以外のマンガは頭が悪くなるので読んではいけないことになっていた。だから、今回の件は、きっと何かしら、受験に関係があるのだ。 「ここに、二十冊のマンガがある。全部、一巻だ」先生はそれだけ言うと、僕たちの起立を促すように手を上げた。 僕たちは立ち、先生のカモンという手の動きに従って、前に集まった。マンガが沢山あった。 「一人一冊、選んでごらん。中を見ちゃダメだぞ

    僕は中学受験に失敗する - ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ
    Lobotomy
    Lobotomy 2008/07/16
    水島新司と受験は両立できないという話。プロ野球編50巻超えてたんだ。
  • 初ボウリング - ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ

    自分史上初めてボウリングにきたカズオミは、パニック状態に陥っていた。今やカズオミは、二歳児ほどの判断力でボールを選んでいた。 嘘だ。なんだこの番号は。何の番号だこれは。あっ、みんな、待って待って。みんな早いよ。球を決めるのがなんて早いんだ。きりさきピエロかよ! ヨウコちゃん、今、「あたしは7って決まってるの」と言ったな。決まっているのか。あらかじめ決められているのか。そうだ、そうじゃなきゃ、みんなあんなに早く選べるはずが無いよ。どういうことだ。俺は何番に決まっているんだ。もしかして、7歳で初めてボウリングをやったってことか? いや、番号は16までしかないぞ! 俺は19歳だもの。適当かな? さては適当でいいのかな? ヒロトは何番なんだ。あの色、何番だ、これか。11番か。確かヒロトは高校のサッカー部で11番を背負っていたと言っていたな。そういうことかな。いや、そしたら帰宅部の俺は何番を背負って

    初ボウリング - ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ
    Lobotomy
    Lobotomy 2008/06/23
    ……コーラは炭酸だからなあ。
  • お父さん、『よつばと!』読みました。 - ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ

    気をつけて! この文章は、僕の創作です。大して気で思ってもいないことを、なぜか「お父さんからマンガを送りつけられて、その感想を言うよう強制されている長男」みたいな設定で書き始めた創作です。だから、それ相応に、なんか親父を言い負かしたいみたいな雰囲気になってるんですけど、単なる文章書くための練習です。どれだけそこまで思ってない、他人の意見っぽいことを書けるかな、という思いのもとで書きました。御託並べました。テーマは、「現在の自分よりちょっと進んでないぐらいの人の考えを自分は書けるのか」なんです。深いぜ、これは深い。僕はもともとこういうのケンカになるから、ケンカがとても嫌いだから、ケンカしたことないから、絶対載せたくないタイプだったのですが、これならまぁいいかと思って載せたんですが、ブックマークでいらっしゃる場合に勘違いしてしまうので、ここにことわっておきます。なので、全然気合を入れて書いて

    お父さん、『よつばと!』読みました。 - ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ
    Lobotomy
    Lobotomy 2008/06/09
    『よつばと!』と『3歳児くん』を比較、創作におけるリアリティについて考える漫画評/今月のユリイカの斎藤環の『よつばと!』評と比べて読むと面白いかもしれない。
  • レッスン1は「死ねボケナス」 - ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ

    太ったメガネのおばさんが入ってきて、小さな教室のホワイトボードの前に立った。 「さあ、あんた達、今日もレッスン始めるわよ。根暗なんでしょ。人前で喋れるようになりたいんでしょ。そのためにお金払ってるんだから、精一杯やんなさいよ。口を動かしていきなさいよ。じゃあいつものように、発声練習いくよ。『死ねボケナス』からね」 「あ、あの……」おずおずと手を上げたのは、今日からこの教室に入った喉元さんだった。「私……初めて…なんですけど……」 「初めてだからなによ」太ったおばさんは赤い三角形のメガネをしていたが、それを外して目頭を押さえた。 「説明を……」 「じゃあ最初から、私初めてなんですけど説明を、って言えばいいじゃないの。何で区切るのよ。ベしゃりをリボ払いにしてどうすんの。何考えてんの。一人でエレベーターに乗ってる時とか何考えてんの。なんでちょっと上を見んの。あの、階数の、あれを見てんの?」 喉元

    レッスン1は「死ねボケナス」 - ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ
    Lobotomy
    Lobotomy 2008/06/03
    才能に嫉妬
  • 1