概要 統合失調症は、人口の1%がかかる「心の病」ですが、これまで脳の中でどのような異常が起こっているのか、その明確な原因は知られていませんでした。昨年、宮川剛客員教授(生理学研究所客員教授、藤田保健衛生大学教授)が、統合失調症モデルマウスの脳の海馬の未成熟さが原因との報告をしましたが(2008年9月10日プレスリリース)、こうした脳の構造的な異常と統合失調症の症状がどう結びつくのか、まだまだ未解明の点がたくさん残されています。今回、自然科学研究機構・生理学研究所の池中一裕教授(副所長)、田中謙二助教、および、宮川剛客員教授らの研究グループは、脳の神経細胞ではないグリア細胞という神経細胞以外の細胞のわずかな異常が、神経の電気信号の伝わり方を遅くさせ、それが統合失調症で見られるような認知障害の原因になっているという新しい知見を発表しました。米国神経科学会誌(ジャーナルオブニューロサイエンス)7