昔、漫画や小説やドラマのお話の中で、たとえば男性が恋人である女性に向かって「君をしあわせにするよ」「君のことを必ずしあわせにすると誓う」などという趣旨の台詞を、細かい言い回しの差ははともかく、言葉にするのを見聞きするたびに、「わたしをしあわせにするだと? 何様のつもりじゃ。わたしはすでに常に相当しあわせじゃ。そしてわたしを今よりさらにしあわせにするのは、まずわたしじゃ。そなたにできるのは、わたしがしあわせであることを応援することと邪魔をしないことくらいじゃ。そなたはまずそなた自身がしあわせであるように努めよ。ええええいっ。ひかえおろう」と、脳内で架空の相手の胸倉をつかみ、背負い投げて床にたたきつけていたことを、なぜかふと思い出した。 そして、夫が、わたしのことを、「王様」だとか「大王様」と、ときどき呼びたくなる気持ちが、なんとなく、少しだけ、わかるような気がしてくるような気がするのは気のせ