「人生から何をわれわれはまだ期待できるかが問題なのではなくて、むしろ人生が何をわれわれから期待しているかが問題なのである」〈訳:霜山徳爾〉。 これは二次大戦中、ナチス強制収容所に囚われた心理学者が、そこでの体験をもとに記した作品の一節だ(V.E.フランクル、『夜と霧』、霜山徳爾訳(初版1956年)/池田香代子訳(新訳版 2002年)、みすず書房)。全人類必読である。 (画像はAmazon.co.jp 夜と霧 新版 Kindle版より) さて、とくにナチスの強制収容所に囚われるという体験がなくとも、同種の疑問、つまり「人生の意味とはなにか」という哲学的な問いに、私たちはしばしば悩まされる。 しかし、この問いにはまったく答えがない。 というのは、人生の意味は、そもそも公共的な合意が取れるかたちで定義することができないからだ。 かりにあなたが手元の辞書を繰って、「人生」の項目をチェックしたとする