〈いき〉(粋、クール)は ・〈媚態〉 ・〈意気地〉 ・〈諦め〉 の3要素から構成されている、と主張した論文だ。 〈諦め〉が入っているのがいい。カッコイイ。 手放す、委ねる、固執しない、押しつけない、それが〈いき〉なのだ。 書いたのは哲学者・九鬼周造(1888-1941)。とてもかっこいい人だ。 「いき」を知る江戸っ子 九鬼周造は江戸っ子だ。父は貴族。 周造がおなかにいるとき、母は美術史家・思想家の岡倉天心(1863-1913)と恋愛関係となり、出産後に離縁されている。 幼い周造は、天心が自分のほんとうの父なのではないかと思っていたという。 ドイツとフランスに学び、ベルクソンと交流、ハイデガーに師事、若きサルトルを家庭教師に雇ってフランス語を学んだともいわれる。 またドイツ語Existenz(仏語・英語のexistence)を「実存」と訳すのは、九鬼が定着させたことらしい。 帰国後、京都大学