「前回の抗体検査の結果をお願いします」 「診察券番号は」 「00002501」 「合言葉は」 「春の祭典」 電話の向こうで主治医が笑う。 「ふふっ。ベジャール 。さて今回も陰性でした。引き続き今まで通り、予防しながら生活をしてください」 「はい、先生もお気をつけて」 ふふっ、とまた主治医は笑いながら電話は切れた。小春日和の汗で湿ったスマホの表面を拭いてポケットに仕舞ったのが三か月前。 新型コロナ禍で、通勤通学者の定期的な抗体検査が義務付けられ、健康保険で検査代がカバーされるようになって一年。業務内容や勤務状況にもよるが、一か月から三か月の間隔で多くの人が抗体検査を受けるようになった。勤め人の場合は勤め先の決定に従い、それより高頻度で受ける場合は半額が自費となる。 内勤だからか勤め先に三か月に一度と決められた抗体検査を受けに、もとからかかっていた主治医のところに常用薬の処方箋をもらいがてら行