2014-12-15 サンタさん、わたしに1000円の指輪をください 自分語り 彼女と彼の薬指には、揃いの指輪が光っていた。 「一生ものだから張り込んだ」と彼が誇らしげに言えば、彼女は「そんなに高くないから」とたしなめ、しかし喜びを隠しきれない表情で微笑む。金曜夜、疲れたサラリーマンの溢れる薄暗い居酒屋のなかで、ふたりだけが周囲にキラキラの『新婚サン』オーラを振りまいていた。 隣でウーロンハイを呑むわたしは知っている。彼が気合いを入れたデートの時に使う、行きつけの焼き肉屋があることを。焼き肉の時には白飯を食べないことを。籍を入れる1週間前に「最後の思い出にしたい」からホテルに泊まりたいと年下の女に乞うたことを。セックスに誘うときには、相手を下の名前で呼ぶ癖があることを。 彼はわたしに魅力的だと繰り返し、婚約者と出会う前に出会っていれば付き合っていたと涙ながらに言ったけれど、結局盛大な結婚式