きっかけは長女の誕生日だった。 我が家では誕生日ケーキは自分たちで作り、切り分けせずにホールのままフォークで直接つっついて食べる習慣がある。イチゴを切り生クリームを泡立てる。途中、人差し指でぺろっとなめる。美味しくて今度はスプーンを持ち出す始末。つまみ食いしすぎて飾りつけ、何か足りなくない?そんなことをわいわいやりながら、今年も作り、食べていた。 横を見ると布団で一人、寝ているシュウ。チューブが鼻から入り胃を通りすぎて十二指腸まで届き、ミルクが直接流し込まれている。喧騒は聞こえているのか、ぼんやりとこちらを眺めているようだ。 ケーキと経管栄養。間違いなく同じ部屋にいて、手を延ばせば届く距離なのに、シュウの布団だけ違う空間にある気がしてしまう。 シュウがまだNICUにいる頃に、経管栄養でだめならそこまでと、夫婦で決断した。でも本当にこれでいいのだろうか。迷いがあることに気付いてしまった。 -