松本さんの記事は、経済学でいうと契約理論やゲーム理論で扱う問題です。マニフェストというのは政党が「選挙で勝ったら~をする」と約束する社会契約ですから、政権をとってその政策を実行しなかったら契約違反ですが、罰則がありません。こういう場合、前にも書いたように、約束を破ることが望ましい場合があります。 特に長期契約の場合には、約束してから実行するまでの間に状況が変わるなどの理由で、約束を破ったほうがお互いにとって望ましい場合があります。こういう場合には、再交渉を行なって契約を変更することがパレート効率的になります。ところがマニフェストが守られないことが事前にわかっていると、国民は選挙戦でどの党を選んでいいかわからないので、まじめに投票しない。 このように事後的には望ましい契約の変更(機会主義的な行動)が事前のインセンティブを低下させる問題を「不完備契約」といいます。これをコントロールするために企