昨年12月に発売された、烏賀陽弘道『カラオケ秘史―創意工夫の世界革命』(新潮社、2008)が非常に面白い。カラオケの歴史について丹念に取材された一冊で、カラオケの起源からカラオケボックスの誕生、通信カラオケの普及、「郊外型・ロードサイド型」から「ビル・イン型」への発展など、その流れが見事に整理されている。 特に印象深かった点を2つ。1つは、「音楽鑑賞」よりも「カラオケ」を娯楽としてあげる人の割合が多く、レコード屋よりもカラオケボックスの店舗数の方が多く、CDなどの音源よりもカラオケの方が消費されているという実態から、日本人にとって「音楽」とは「聴くもの」「受動的に鑑賞するもの」ではなく「歌うもの」「能動的に参加するもの」だという指摘している点だ。例えば現在では、「コミュニケーション消費」の欲望をウェブサービスやテレビ番組の歴史などから読み取る論も少なくないが、カラオケというメディアを観察す