サイエンス・フィクションの終焉 ──ある歴史哲学についてのノート── 西村豁通・竹中恵美子・中西洋編著『個人と共同体の社会科学』ミネルヴァ書房、1996年3月、所収 稲葉 振一郎 1 サイエンス・フィクションの死 歴史哲学としてのサイエンス・フィクション サイエンス・フィクションが死に瀕している。 ここではサブカルチャー、ポップカルチャーとしてのサイエンス・フィクション、つまりミステリーなどと並んで、20世紀の通俗文学、エンターテインメントの一ジャンルを構成しているそれのことのみをいっているのではない。そのようなジャンルとしてのサイエンス・フィクションはまた同時に、我々のより普遍的な世界イメージの根底にあるものを分かりやすくデフォルメした形で表現してくれているものであるが、そうしたイメージのプロトタイプ、いわばサイエンス・フィクション的なるもの自体が、今や根腐れて、解体しつつある。 原イメ