この2日間で、母の通夜と葬儀をおえた。92歳だったから天寿を全うしたのだと思う。炬燵にあたってTVを見ながら往生した。 母は少女時代を大正期に送った絣(かすり)と袴(はかま)の似合う京都の人だったが、女学校の頃にラジオドラマ・コンクールで優勝するような演劇好きでもあった。その母を偲んで、母がファンでもあった戸板康二さんの一冊を贈ることにする。 【劇場愛・大谷竹次郎】双子の大谷竹次郎と白井松次郎がつくった松竹を支えたのは、大正の歌右衛門・中車・仁左衛門・羽左衛門たちで、その弟分を左団次・菊五郎・吉右衛門が後押しをした。しかし大谷は演目の決定にはすこぶる頑固だった。古老格の遠藤為春・川尻清潭・木村錦花にも身震いをして拒否権を発動した。が、実のところは「娘道成寺」「鳴神」「河内山」などの坊さんの出る芝居がたんに好きだっただけで、「新薄雪物語」などのよほどの顔揃いじゃなきゃできない大芝居は嫌いだっ