議論が感情的になり、意見が両極端に分かれる現象がSNS上で多く見られるように、情動が知性を上回る状況が昨今ますます顕著になっている。時として知性よりも情動に訴える性質を持ち、政治と結び付くものの一つに、音楽や映像など身近な芸術表現がある。五神真総長が唱える「知のプロフェッショナル」になることを期待されている我々は、こうした芸術表現に潜む生々しい政治性にいかに向き合うべきか。表象文化論が専門で、政治と情動の関係を芸術の観点から論じている田中純教授(総合文化研究科)に聞いた。 (取材・円光門 撮影・児玉祐基) 田中純教授(総合文化研究科) 93年総合文化研究科博士課程中退。博士(学術)。総合文化研究科准教授などを経て、09年より現職。主な著書に『政治の美学』(東京大学出版会)など。 ──民族間、宗教間の対立は現代においても顕著ですが、人々はまさに知性ではなく情動によって、自分の国を守るために異