弱小コンサルタント会社に勤務する六道様也(りくどう さまなり)は、いささか疲れていた。クライアントに提出する資料制作が山場を迎えているのだ。30代半ばでいまだアシスタントに過ぎない様也には資料制作の仕事ばかりが回ってくる。いまにみていろ、自分だって輝くシニアコンサルタントになってやるという心意気はあるものの、まだまだ先は長い。年齢だけシニアになってしまう。もっともコンサルタントの実力は、押し出しと迫力が半分で、残りの半分は人脈のようなものだ。論理的思考能力が重視されないことは経営ノウハウなどない作詞家や研究者にアドバイスを請う経営者が後を絶たないことからも明らかだ。 様也が東京郊外の我が家に帰ると、すでに食卓に一家全員揃っていた。全員揃って夕食をとるというのが様也のポリシーだ。そのために今の会社も20時で退社する条件で入社した。 「ジジイ、おせーよ」 中学校に進んでからすっかり口と頭の悪く