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ブックマーク / tomio.hatenablog.com (69)

  • 登美彦氏、傘をなくす - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ

    森見登美彦氏は傘をまともに使いこなせたことがない。 意気揚々と新しい傘を買ったとしても、数回使っただけで彼らは登美彦氏を置いて去る。客観的に見れば「置いて去る」のは登美彦氏であるが、氏の内面においてはむしろ逆だ。 傘を失うたび、登美彦氏の硝子のハートは粉々になり、もう傘なんてしない、もう恋なんてしない、と誓うのである。 しかし三月の雨は氏を淋しく濡らすので、もう傘なんてしないなんて言わないよゼッタイと登美彦氏は前言を巧みに撤回する。 三月の雨に濡れてはいけない。ダメ、ゼッタイ。 なぜなら風邪を引くからだ。 やむを得ず、登美彦氏はまた新しい傘を買った。氏と新しい傘の蜜月に、いつ終止符が打たれるか、予断を許さない。 「それにしても、傘というものは、置き忘れられて然るべき仕組みをしている。なぜあの仕組みを改善できないのか」

    登美彦氏、傘をなくす - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ
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    Ooh 2006/03/03
    心の風邪を引きそうな。ペプチドで手首とくっつけちゃえ傘。
  • 登美彦氏、聖バレンタインデイチョコを手に入れる - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ

    森見登美彦氏が惑溺してはばからないLOFTの文房具フロアにバレンタイン用のコーナーができて、手帳のたぐいが隅に追いやられてしまった。 憤激した登美彦氏がうろうろしていると、ポスターが目に入った。 「告白しなかった恋は、どこへ行くのだろう」 「知らんがな」と登美彦氏は言った。 登美彦氏は、聖バレンタインデイにさして興味はないと述べる。なぜならあまりにも無縁であったからである。氏の出身校は男女共学であったから、ためしにドキドキしてみたものの、やがてドキドキするだけ寿命を縮めて損だと見抜き、激しく興味を失った。 やがて思春期の荒野を迷走しだした登美彦氏は、友人がもらったバレンタインの手作りクッキーを、別の友人とともにむさぼり喰うなどの悪事を重ね、己のバレンタインにまつわる想い出を、黒一色に塗りつぶしたのである。 さらば恋するチョコ祭り。さらば恋する乙女。 意中の人のために恋する乙女が作ったクッキ

    登美彦氏、聖バレンタインデイチョコを手に入れる - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ
    Ooh
    Ooh 2006/02/15
    神。 私からじゃないですと断固として言うというのはツンデレやもしれん。ので頑張ってみましょう。
  • 登美彦氏、祖母転居の報せを受ける - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ

    森見登美彦氏は迫り来る締切にそなえて英気を養うため、近所のスーパーで軽やかに買い出しを行っていたが、祖母が実家にて事中に倒れ、救急車で運ばれたという妹からのメールを受け取った。 慌てて買い物かごを放り出し、登美彦氏は電車に乗った。 そしてガタゴトと暗い夜を抜けて奈良へ向かう途上、「亡くなりました」という報せを受けた。 祖母は夕の牡蠣ごはんを美味しい美味しいとべながら上機嫌であったが、ふと「あれ、なんやら、おかしいよう」と呟いて胸を押さえたかと思うと力を失い、それきりであったという。 つい先ほどまで、当たり前に元気にしていた祖母が、ふいっとこの世からサヨナラしたのだと考えると、なんだか哀しさよりも不思議さが先に立つように思われ、登美彦氏は「むーん」と唸った。 登美彦氏は、来週には一度、実家へ戻るつもりであった。 しかし来週には、もう祖母はいないのである。「登美彦氏ご幼少のみぎり、彼はい

    登美彦氏、祖母転居の報せを受ける - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ
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    Ooh 2006/02/09
    よいご夫婦だったのですね。
  • 登美彦氏、東へ - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ

    登美彦氏は、気に入った形にまとまらない書き物に嫌気がさしたので、ぶらりと地下室を抜け出し、地下鉄東西線に乗りこんだ。 「とりあえず東へ行こう。なむなむ!」と氏は呻いた。 「三条京阪の次が京都市役所前で、その次が烏丸御池だ。二条城前で、二条で、その次が名古屋、それから横浜、品川、そうすればもう浅草だ」 そういうわけで登美彦氏は浅草で下車した。 登美彦氏は雷門を見上げ、浅草寺の界隈を歩き廻り、なんだかアリガタイ御利益があるらしい煙を頭に浴び、溶け残った雪を蹴飛ばし、道行く人に酩酊して意見している人を見物した。 「こんな近所に浅草があったのなら、もっと前から遊びに来ればよかったのだ。文明開化というものは侮れん!」 そうして浅草を満喫した登美彦氏は、総決起集会の場所へ向かった。 どこまでも延びていく長い長い商店街の一角、鯨の店があり、そこで日妄想大賞日ファンタジーノベル大賞を頂いた妄想つかい作

    登美彦氏、東へ - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ
    Ooh
    Ooh 2006/01/24
    いやそれ西へ向かってるし。
  • 登美彦氏、正月を厳粛に満喫する - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ

    登美彦氏は郷里へ戻り、相棒の柴犬「小梅」とともに寝正月を満喫した模様である。 登美彦氏は二○○六年を実り多き年とするために、二○○五年になした数々の事柄を整理し、二○○六年になすべき事柄を一覧表にしなければならぬと決意していたが、寝るのに忙しくて、そのようなことをしている閑がなかった。現在のところ、氏が目前に掲げている目標は、「二○○六年を実り多き年とするために、二○○五年になした数々の事柄を整理し、二○○六年になすべき事柄を一覧表にする」である。 「これは非常に重要かつ面倒臭い仕事であるから、おそらく今年前半はこの作業に忙殺されることになるであろう」と登美彦氏は述べた。「あるいは今年いっぱいかかるかもしれない。やむをえないことである」 日より、登美彦氏は京都の巣へ舞い戻り、自堕落な生活と勤勉な仕事を両立させるという困難な事業に着手した。 ついでに。 初詣に出かけた先で、氏はおみくじを引

    登美彦氏、正月を厳粛に満喫する - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ
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    Ooh 2006/01/03
    おめっとうさん。 数少ないとは思わないけどなあ。どうなんだそこんとこ。って本人が少ないというのだから少ないのだろうが。しかしその基準はいったいどれほどのものなのだろうか。一日1000人来る/来ないくらいか。
  • 追加 - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ

    森見登美彦氏はまた、以下の三点を追加した。 ①自作を読み返す羽目になっても、頼りになる兄貴のように過去の自分を抱きしめてやれる方法 ②もしくは自作が絶世の美女に見える方法 ③もしくは自作を読み返すという概念がこの世から消滅する方法 森見登美彦氏はさらに、以下の一点を追加した。 ④生き甲斐を感じながら毎日を誇り高く生きる有能なモテモテナイスガイになる方法 (努力抜きで)

    追加 - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ
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    Ooh 2005/12/21
  • 登美彦氏、書く、続。 - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ

    森見登美彦氏はやはり書いていた。 毎度のことではあるが、登美彦氏はこの週末を誰とも口をきかずに過ごした。 他人と口をきかずにすむのは登美彦氏にとってはむしろ愉快である。しかし週末が明けて人と口をきかねばならぬとき、きまって登美彦氏は困難を感じる。人との喋り方を忘れているのである。 したがって登美彦氏は出かける前に、「おはようございます」「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と発声練習をしようと考える。けれども未だにしたことがない。朝そんなことをしている時間はないからだ。 誰とも口をきかず、無精髭を伸ばして気分を盛り上げ、風呂にも入らず、珈琲を三十杯飲み、煙草を百灰にしたが、懸案の書き物は仕上がらず、また一つの暗礁に乗り上げた。乗り上げて遊んでいる場合ではないのだが、乗り上げてしまった。 「これはいかんな」と登美彦氏は呟いた。「しかし事態はおのずから好転するであろう。何の根拠もない

    登美彦氏、書く、続。 - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ
    Ooh
    Ooh 2005/12/19
    “「せっかく雪が降ったのなら、その中を歩きたいではないか。そうではないか」”
  • 背筋を鍛えない登美彦氏 - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ

    森見登美彦氏は新京極のLOFTへ出かけた。 かつては「ええじゃないか騒動」を起こしたにせよ、氏はクリスマス迫る街へ出ても、もはや何ら痛痒を感じない。というよりも傷ついたこともない。クリスマスは大好きである。むしろ愛していると言っていい。 したがって氏にとって、LOFTで仲良く品物を見て廻る男女を微笑んで見守ることも可能である。可能であるということは、あくまでやろうと思えばできるということであって、実際に行為に及ぶことと同義ではない。そういうことを氏は戦友のブログから学んだ。 繰り返すが、氏はむしろクリスマスは大好きである。「さあ来い、大人のためのサンタクロース」と意味不明の言葉を口走っている現場を関係者におさえられたことがある。その意味を正確に述べるように迫られた氏は、断固として黙秘した。 LOFTにおいて、氏はメモ帳を買った。氏はたくさんメモ帳を買い、そしてしばしば、それを愛でるだけで使

    背筋を鍛えない登美彦氏 - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ
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    Ooh 2005/12/17
    “万年床の上に枯れ草のように横たわった。” 氏のご尊顔を思い浮かながら読むと、むふふふ。
  • 冬将軍 - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ

    なにしろ寒すぎてブログも書けない。

    冬将軍 - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ
    Ooh
    Ooh 2005/12/12
    なんだか、佐藤哲也先生とそっくりなんだな。こんな短い文章でも似ているのが判る。