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2016年、クリスマスの数日前のこと。かかってきた電話は、それまで誰も予想できなかったような内容だった。 シーナ・マコーマック教授は、HIVウィルスを追跡し、それと闘うことに生涯を捧げてきた疫学者であり、世界でもっとも高い評価を受けるHIV専門医だ。マコーマック教授はその日、電話の相手に対して、トップニュース級のメッセージを伝えた。この12カ月間で、HIV感染症の診断を受ける男性同性愛者の数が40パーセント、イングランド全域では3分の1も減ったという知らせだ。 HIVウィルスが発見されてから35年以上が経つが、これほど大幅に減るのは異例のことだ。このあまりにも大きい数字は、医学界では驚きを通り越して虚偽にさえ見えてしまう。だが、この数字は本当だった。 この物語の背景には、秘密裏に何度か行われた会合と、人々のネットワークがあった。その中心にいたのは、ある男性だ。医学の歴史が変わった陰には、人
本書は、精神を病んだ人を説得し医療につなげる「精神障害者移送サービス」に従事する著者がまとめた本だ。生命の危険を伴う仕事であろうことは想像に難くないが、全体の半分以上をしめる第1章「ドキュメント」では、想像をはるかに上回る壮絶な事例が多数紹介されている。その文章は、第三者によって安全な所から書かれたものとは違い、対象者の回復を願い行動を共にしている著者の目線で書かれたものだ。だから、読者は冒頭からグングン引き込まれていく。後述するが、私にとってこの第1章は、親として得たものが非常に多かった。 第2章以降は、精神保健分野の問題点について、法制度の面もふまえ解説し、提言している。これを読むと我が身の危険を感じ、背筋が寒くなる。危険をかかえた人が、長期入院を減らす国の施策によって退院を促され、市中に増える傾向にあるという。他人事ではない。すぐ身近に危険は迫っているのだ。私が本書を初めて読んだ8月
(※イメージ) 近年、子宮内膜症を「予防できる病気」としてとらえる動きが出てきている。2008年、副作用がほとんどない低用量ピルが子宮内膜症の治療薬として保険適用となったことが、きっかけの一つだ。子宮内膜症の予防や不妊についてくわしい慶應義塾大学病院産婦人科教授の吉村泰典医師に話を聞いた。 * * * 「月経がある女性なら、月経痛があるのは当然」。日本では長いことそう考えられてきました。しかし月経のたびに痛みに悩まされ、学校や会社を休まなければならない状況は異常です。月経痛は、普通はないものなのです。 子宮内膜症は、良性では数少ない進行性の病気です。30代で多く発見されますが、ごく早期の病変はすでに10~20代のときに出現している可能性が高いと考えられています。 米国では、慢性的に骨盤痛がある高校生の20~50%に子宮内膜症があるというデータもあります。このため米国では、月経困難症(月
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