裁量労働制に関する厚生労働省調査に不適切なデータ処理があった問題で、調査に当たった労働基準監督官の男性が二十四日までの共同通信の取材に「一社当たりの調査時間を約一時間半とする内規に従ったが、(私の場合)十分な時間が取れなかった。結果的に調査がずさんになってしまった」と証言した。 この調査を巡っては、これまで不自然な数値が二百件以上見つかっているが、実際に担当した監督官が調査手法の不備を証言するのは初めて。全国約三百二十の労働基準監督署が一万一千五百七十五事業所を調査したが、不十分な調査の一端が浮かび上がった。 問題となっているのは「二〇一三年度労働時間等総合実態調査」。裁量制の拡大など働き方改革関連法案の一部は、この調査を踏まえた政府の審議会の議論を経て作成された。安倍晋三首相は全データの精査を指示しているが、調査全体の信頼性に疑義が生じれば法案そのものの正当性が問われかねない。