貧血による症状は多様です。典型的には倦怠感、つまり「体がだるい」と感じることですが、重症になれば動悸や息切れが生じます。しかし貧血の程度(血液中のヘモグロビン濃度)と症状の重さが必ずしも一致しないこともあります。むしろ慢性の貧血の場合は倦怠感などの症状に乏しいと言われています。貧血の状態に体が慣れてしまうからでしょう。 興味深いことに、貧血がなくても鉄不足による倦怠感が生じることがあります。2012年に発表されたフランスの研究を紹介します。貧血はないが血清フェリチンの値が低く(=鉄不足)、かなりの倦怠感を感じている18歳から53歳の女性198人をランダムに、鉄の経口投与群(102人)とプラセボ群(96人)に分け、12週間後に質問票によって倦怠感を測定したところ、鉄投与群では47.7%、プラセボ群では28.8%改善しました。統計学的に有意差があります。 通常の臨床において、倦怠感の訴えがあれ
![貧血はないのに鉄不足? 倦怠感の理由とは:朝日新聞デジタル](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/756f0d5b345570d416d9fe9369456801cf79c05c/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fwww.asahicom.jp%2Farticles%2Fimages%2FAS20181108003638_comm.png)