「蓉子さまは、雨上がりがお好きなんですか」 いつもの帰り道。 昨夜から降り続いていた小雨も止み、薄く延べられた雲を透かして夕陽が濡れた木々の紅葉を更に赤く染め上げている。 ゆっくりと歩いていた足を止めて軽く息を吸い込んだ紅薔薇さまに、隣を歩いていた少女が問いかけた。 「ええ。……どうして?」 蓉子の言葉は足りなかったが、少女の問いかけの理由もまた不足していたからこれはお互い様というものだろう。もちろん、彼女に蓉子の意図は正確に伝わっていたが。 「なんとなくです。今の蓉子さまが、ただ雨上がりの空気を感じたいだけって訳ではないんじゃないかな、と思ったので」 小さく笑いながら言う。 きっと彼女自身にもどうしてそう思ったのか、なんて正確なところはわかっていないのだろう。それでも蓉子の行動のほんとうを正しく言い当てたことが、少女― 出会ってからまだほんの少ししか経っていない、しかも山百合会のメンバー
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