聞き手:角川ミステリ編集部 作家であり続けること ―― 作家になることよりも、作家であり続ける方がよほど難しく、また、元政治家や元大学教授はいても、元作家と言うのはありえないので、作家たる者、生涯作家であり続けなければならないという、お話をされているのを何度か伺ったことがあります。そのお話を伺うたびに、作家であることの凄みを感じるのですが、その緊張感を持ち続けておられる、根の部分には、なにが潜んでいるのでしょうか。 作家は、前作家、元作家とは言われないように、書くことをやめた瞬間から、本質的には作家ではなくなります。書くことを止めた作家が作家と呼ばれていても、それは作家の"余韻"です。作家は職業ではなく、状態であるという説も、その辺の事情を裏書しているのでしょう。 作家にはほかの職業にはないうま味もあります。そのうま味には中毒性があります。一定期間書きつづけて、その収入によって生計を