ひどくむくんだ顔、左頬には鬱血(うっけつ)の跡があり、瞳孔反射もみられない…。手術室に入ってから8時間後、ようやく対面できたまな娘は変わり果てた姿となり、ストレッチャーの上でぐったり横たわっていた。 平成13年3月。東京女子医大病院(東京都新宿区)で心臓手術を受けた群馬県高崎市の平柳明香さん=当時(12)=が、手術中に脳障害に陥り死亡した。 「簡単な手術だから中学に入る前に治しておこうね」。明香さんは、生まれたときから心臓の左右の心房をしきる壁に穴が開いている心房中隔欠損症だった。このため同年代の子供より小柄だったが、両親の説得には黙ってうなずき、気丈に振る舞った。それでも手術が近づくと「死ぬことはないよね」と不安を打ち明けることもあった。 東京女子医大病院は心臓外科手術の権威として知られる。「最高の病院だと信じ、主治医からも命を落とす危険性はないと聞いていたから…」。歯科医の父、利