この世にダシール・ハメットという人がいる。いや、過去の人だから、いたというべきだね。 ダシール・ハメット。アメリカ人。小説家。ハードボイルド小説の始祖とされる。 たとえば黒澤明の『用心棒』はハメットの『血の収穫』と『ガラスの鍵』である。これは黒澤明自身が認めている。本当は原案ダシール・ハメットとしなければいけないくらいストーリーの類似点が多い。隠さないところが黒澤明のえらいところです。『用心棒』という映画全体が持っているどこか日本離れした印象は、そのあたりからきているのかもしれない。時代劇なのにからっと乾いている。 ちょっと余談を。たとえば関東と関西では、家の建て方がちがうものらしい。どこがどうちがうのかぼくには指摘できないが、そういうものだと思おう。で、時代劇の場合『用心棒』以前は、関東を舞台にしていても、建物は関西風ということが当たり前だった。それを『用心棒』で、黒澤明は全て関東風で統