『開放病棟──精神科医の苦闘』 近藤廉治著(合同出版1975年) (第2章)三つの私立病院時代 P40~49 ●体制に圧しつぶされた人たち 長野県の一地方に、珍しい社会制度が残っていて、その制度のもとに生きてきた御老人が、まだ3人達者でいることを、ある偶然のことから知った。そこで、このような古い制度が人間の心にどのような影響を与えるものかを調べることにした。山間部の住民の高血圧の調査というふれこみで、そのかたたちとの接触をもつようになり、降圧剤をカバンに入れては、なん回となく、その家庭や部落を訪れた。家族には、この制度のことに触れたくない気配が見えたし、当の3人は共通して人嫌いで無口なので、精神状態を調べるのには、かなり手間どった。昭和36年のことである。 おじろく、おばさ制度 耕地面積の少ない山村では、農地の零細化を防ぐために、奇妙な家族制度を作ったところがあった。長野県下伊那郡天竜村(