いつ、どこでだったのかは忘れたが、「縄を編む」という表現を見かけたことがある。一瞬、縄を使って何かを作る工程のことかと思ったのだが、前後の文脈からそうでないことがわかった。縄の原料である藁を「編んで」縄にする工程のことを指していたのだ。 それは「編む」のではなく「なう」だ。日本語として間違っている。 とはいえ、日常生活で「なう」という動詞を用いる機会が非常に減っていて*1、そういう言葉があることを知らない人がいてもおかしくないだろう。「なう」を漢字で書けば「綯う」だが、「綯」は常用漢字に入っていない。 つい最近、ある小説*2を読んでいると、次のような一節があった。 「あの機械ですが、何なのかご存じないですか。見る限り農具小屋だと思うんですが、何に使う機械か知らなくて」 私も馴染みがあるわけではない。しかし、前の住人との折衝する中で話を聞いていた。 「ああ、古い脱穀機です。米を収穫したら、あ