再録にあたって この小説は去る2005年5月4日に自室の大掃除をした際に発見したものである。400字詰原稿用紙に鉛筆で下手な字で書かれていて、判読には困難を極めた。執筆時期は明記されていないが、おそらく1980年代半ばのものと思われ、原稿用紙は変色していた。しかも、掃除が終わった頃には再び大量の書籍や雑誌の山に埋もれてしまい、今に至るまで行方不明である。 ここに再録するのは、従って原稿用紙手書きヴァージョンではなく、その後1991年に同人誌に寄稿したヴァージョンである。この同人誌も大掃除で発掘したものだ。 なお、この小説には明らかな誤字・脱字*1や著しく拙い表現*2が散見されるが、時代背景を考え、また作者が故人同然であることから、あえて原文のままとした。 丘の上の古い館で彼女は生まれた。彼女は十八人姉妹の末っ子で、生まれた時から両親はいなかった。彼女は十七人の姉と共に暮らしてきた。 1 三