「なあ、お前、非番じゃないだろう。こんなところでサボっていていいのか」 血の池で釣りをしている青鬼に赤鬼が言った。二人とも地獄の獄卒である。 「いいのいいの。獄卒がサボれば亡者は喜ぶ」 「亡者を喜ばしちゃいかんだろう」 「赤鬼はマジメだなあ」 「仕事はきちんとやるべきだ」 「そんなにマジメに働いて何になる」 「働いても何にもならんかも知れんが、サボってたら地獄に落ちるぞ」 「もう地獄にいるわけだが」 「獄卒でなく亡者として地獄に落ちて苦しむことになるぞ」 「だけどなぁ、マジメに仕事しても地獄に落ちるんじゃないかと思うんだよ」 「なんで」 「虫を一匹殺しても地獄に落ちるんだぜ。まして、俺たちは毎日毎日亡者を責めて責めて苦しませているんだ。そして亡者も最後には死ぬ。簡単には死なないけど、最後には必ず死ぬ。俺たち獄卒が責め殺したってことだ。地獄に落ちないわけがない」 「確かに亡者は死ぬけど、獄卒