武田綾乃氏の原作小説『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』の映画化にあたる本作は、コンクールに向けた新しい自由曲「リズと青い鳥」のソロパート担当である鎧塚みぞれと傘木希美の2人に焦点をあてた作品だ。
高校の吹奏楽部を舞台にした映画と言えば、目標に向かって走る熱い青春物語が定番です。山田尚子監督の手にかかると異なる世界になりました。新作アニメ映画「リズと青い鳥」は2人の少女の揺れ動く感情を繊細にすくい取り、清涼感漂う作品に仕上げています。 -「リズと青い鳥」は人気小説「響け!ユーフォニアム」シリーズが原作。熱血青春ドラマとして描かれがちな吹奏楽部のイメージを裏切る映画ですね。 ★山田 「響け!ユーフォニアム」シリーズにはユーフォニアムを吹く久美子という主人公がいますが、今回の原作はオーボエのみぞれとフルートの希美の話が際立っていたので、2人を主人公にもう1本(スピンオフ的な)映画を作ろうと提案しました。吹奏楽部の「熱血」という要素を取り除いて2人にフォーカスしました。 -どんな点にひかれましたか。 ★山田 原作のキャラクター造形の切り口に興味がありました。少女たちの間にある羨望や嫉妬、大
冒頭、鎧塚みぞれを中心に据えた描写から始まった本作は徹底して内面を覗き込むような映像で構成されていました。浅い被写界深度、表情を伺うようなレイアウトの数々は言葉ではなく映像ですべてを物語るように繋がり、その瞬間瞬間にみぞれがなにを思い、考えているのかということを寡黙に語っているかのようでした。あらゆる芝居の機微に込められた情報量は言葉にするのも躊躇われるほどの多さと緻密さを誇り、彼女特有のアンニュイな表情も合わさることでより、みぞれの心情を深くそこに映し出していました。 しかし、転換期はみぞれが音大への進学を薦められ、パンフレットを受け取ったあとに訪れます。それまで一様にしてみぞれへ寄っていたカメラが希美を映し、彼女の心情にもそのフレームを寄せていくのです。ですが、それは本作が『響け!ユーフォニアム』として描かれていた頃からなにも変わらずに続けてきた物語の分岐に他なりません。すべての登場人
『リズと青い鳥』は沈黙の音を描き切る。吹奏楽を題材にした音楽のアニメであるにもかかわらず、深い沈黙をすくいあげる。わかりやすい言葉はなく、感情移入を促す劇伴もない。 にもかかわらず印象深い長編である。この沈黙がアニメでまず見ることがない繊細な感情表現を実現しているからだ。少なくとも現在、国内の商業アニメにおいてこの感情表現を比較できる作品はない。 『リズと青い鳥』は沈黙の音を描き切る。 沈黙とはもちろん無言でいることじゃない。建前のおしゃべりはいくらでもする。なのに大事なところで本心や演奏技術が噛み合わない時、沈黙は現れる。沈黙は本編の『響け! ユーフォニアム』でも少なくなく描かれてきた。さまざまなパートごとの対人関係のすれ違いをはじめ、集団の規律の中で演奏する吹奏楽だからこそ沈黙は重たくのしかかる。 セッションで誰かのミスで中断するとき。吹奏楽部内で頑張ろうとする建前と本音がずれるとき。
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く