◇受験生の春は複雑 私は30年ほど前に教育業界で働き始めましたが、春は合格者と不合格者が混在するために、とても複雑な気持ちになります。私自身も浪人を経験しているので、春の陽気の中、桜が満開の公園の横を通り過ぎた時の、自分だけ取り残されたような、あの何とも言えない寂しさと口惜しさが入り交じった複雑な気持ちをいまだに覚えています。 ◇神谷くんとの出会い 毎年、1月から4月上旬にかけて、予備校は生徒の医学部受験と、新入生の受け入れ準備など、1年で最も忙しい時期になります。私はこの時期、勤務をしている校舎の運営支援のために幾つかの校舎を訪れます。 今年1月、1年ぶりに訪れたある地方校舎で、1人の男子生徒と出会いました。 第一印象は、他の生徒よりも貫禄があり、年齢は20代後半の多浪生ではないかとう感じでした。その校舎のスタッフに彼のことを聞くと、1年前に入校した生徒で、やはり多浪生とのことでした。